同じ原作の小説から、なぜか2つのマンガが刊行されている『薬屋のひとりごと』。
両作品とも読み進めている私が、違いと魅力を解説していきます。
記事の目次
「薬屋のひとりごと」の2つのマンガ
「月刊ビッグガンガン」と「月刊サンデーGX」掲載の2つ
小説版『薬屋のひとりごと』を原作とした、2つのマンガがあります。
月刊ビッグガンガン掲載
月刊サンデーGX掲載
の2つです。
この2つのマンガの違いを語るにあたって、
各作品ごとに重要視している点
と思われる事を中心に語っていこうと思います。
『薬屋のひとりごと』の作品内容
2つのマンガの違いを語る前に、
まずは両マンガの大元となる小説の解説から。
ストーリー
舞台は、古代中国の漢を思わせるような皇帝の存在する帝国。
主人公の猫猫は薬師として花街(現代で言う風俗街)で働く少女だった。
しかし、人攫いによって猫猫は
後宮(皇帝の妃たちが住む場所)へ手伝いの下女として売り飛ばされてしまう。
また自由になれるまで大人しく後宮で働くつもりの猫猫だったが、
皇帝の子供が衰弱している事件に直面。
猫猫は持ち前の好奇心と薬師としての知識から事件を解決してしまった。
この事件の解決をきっかけに美形の宦官の壬氏に目をつけられ、
後宮内で起こる事件に巻き込まれていく。
そして、後宮を取り巻く事件を解決するにつれて、猫猫と壬氏の関係も変化していく。
ジャンルは「 ミステリー x ラブコメ 」
後宮で起こる事件を解決していくという「ミステリー」
主人公の猫猫と、美形の宦官の壬氏の関係を描く「ラブコメ」
この2つがメインのジャンルの作品です。

宦官(かんがん)とは?
去勢を施された男性。
簡単に言うと、ちんこを切り落とされた男。
皇帝の妃たちが手をつけられないように、
男性禁制の後宮に使える男性は宦官であることが求められた。
そういった疑問も出るでしょう。
ですが、少女と宦官の恋?という疑問も作品を彩る要素の1つです。
なので、読み進めて自身で解決することを楽しんでください。
ネット小説から出発した作品
『薬屋のひとりごと』は、
最初はネット小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿された作品です。
現在では修正・加筆された文章がヒーロー文庫より出版されています。

原作である小説はこちら!
月刊ビッグガンガン掲載 『薬屋のひとりごと』
基本情報
原作:日向夏
作画:ねこクラゲ
構成:七緒一綺
キャラクター原案:しのとうこ
「登場キャラの魅力」を重要視した作品
ねこクラゲさんによる『薬屋のひとりごと』を読み、
プクッとした可愛らしい女の子を描かれている
というのが私の第一印象です。
作中ではデフォルメ化した姿で描かれるなどして、
物語に緩急をつけたり、キャラの心情を伝えてきたりなどしてきます。
ストーリーは原作の小説をしっかりと踏まえつつ、
それに加え高い画力の絵の描き分けによって、
キャラの魅力を「これでもか!」と殴りつけてくる作品です。
キャラの魅力の引き出しが1番際立った話。 第十八話「阿多妃」
個人的に1番「高い画力によってキャラの魅力が引き出された」と思った話を紹介します。
それは4巻に掲載されている 第十八話「阿多妃」です。
詳しく書くとネタバレになってしまうので、さらっと話の要点をまとめます。
後宮から1人の妃が去ることになりました。 妃の名前は阿多妃。
「男装の麗人」と呼ばれるほど、美男と言われても違和感の無い妃でした。
ですが、去っていく直前に見せた姿は男装の麗人ではなく、
1人の女性、母親の顔をした姿でありました。
話の途中までは「男装の麗人」と呼ぶにふさわしいイケメンのように描かれている阿多妃。
出典:ねこクラゲ『薬屋のひとりごと』第4巻
ですが、話の最後
その時 青年のような凛々しい妃の顔が 母親の顔に見えた
というコマでは、
年相応の子供を持つ女性、母親の顔
として高い画力で絵が描き分けられています。

見れば言いたいことは一目瞭然で伝わると思いますので、
ぜひ一見しておく話であるとオススメします。
まずは1巻を調べてみる!
「次にくるマンガ大賞2019」でコミックス部門1位を獲得
(2019/8/23 追記)
ダ・ヴィンチとniconicoが運営しているユーザー参加型のマンガ賞である「次にくるマンガ大賞」
その2019年のコミックス部門で、
月間ビッグガンガン掲載版『薬屋のひとりごと』が1位を獲得しました。
好きなマンガですので、1読者として私も嬉しいばかりです!
「次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門1位のマンガ
月刊サンデーGX掲載 『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』
基本情報
原作:日向夏
作画:倉田三ノ路
キャラクター原案:しのとうこ
「サクサク進むストーリー」を重要視した作品
私はマンガとして先に読んだのが、前述した月刊ビッグガンガン掲載版でした。
ですので、どうしても比較するという目線で読んでしまったのですが、
その時に感じたのが「ストーリーの進行スピードが早い」ということ。
事件や出来事の1つにつき1話。
そういったルールの元でマンガの構成を作っているのかな?と感じました。
ですので、
ゆったりとした展開ではなく、常に新しい何かが起こるようなモノが読みたい方
すでに原作の小説を読んでおり、マンガで「薬屋のひとりごと」の世界を早く見たい方
にオススメできる作品です。
絵はリアル寄りで、特に嫌がる時の顔は必見
マンガですので、絵柄についても一言。
倉田三ノ路さんの描かれるのはリアル寄りの落ち着いた絵柄。
出典:倉田三ノ路『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』第2巻
舞台が古代中国の漢を思わせるような仮想の帝国であることを考えると、
世界観にマッチし原作の空気感にも合っている絵柄です。
そして、頼み事を嫌がるときの顔は
読者に「もう、ほんっとうに嫌なんだろうな」と思わせるほどの描写です。
物語の中で
毛虫でも見るような目で
ナメクジを見るような目で
と書かれていますが、それに相応しい嫌そうな顔を見事に表現されています。

と気になった方は、是非ご一読ください。
本の内容を調べてみる!
なぜ2つのマンガがあるのか?
『薬屋のひとりごと』に
- 月刊ビッグガンガン版
- 月刊サンデーGX版
の2つがあると知ると当然出てくる疑問は、
「なぜ、2つの雑誌で同じ原作のマンガが掲載しているのか?」
これについて調べた結果を発表します。
2つのマンガがある理由は、明言されていない
2つのマンガがある理由について調べた結果は、
正直に言うと分からない
です。

ちゃんと調べたのか?
「正直に言うと分からない」という結果になったのは、公式からの発表が無いからです。
2つのマンガがある理由について、公式からの発表は無し
調べるにあたって、
- 原作の小説の作者である「日向夏」さん
- 月刊ビッグガンガン版の作者である「ねこクラゲ」さん
- 月刊サンデーGX版の作者である「倉田三ノ路」さん
- 掲載誌である「月刊ビッグガンガン」
- 掲載誌である「月刊サンデーGX」
のTwitterやブログ、サイトを拝見しました。
ですが、どちらにも
「2つのマンガがある理由? それは◯◯って理由で、◯◯な狙いがあるからだよ。」
といった形の明言がないため、
不甲斐ないですが、理由は「正直分からない」という結論に達しました。
ですが、明言が無いからといって、憶測は出来ないものでもないです。
なので、「2つのマンガがある理由」についての
私の憶測を2つ述べることで茶を濁したいと思います。
理由の憶測1:作品を知っている人が多くなる
単純に、2つの雑誌で掲載されると、
『薬屋のひとりごと』というマンガを知っている人の数は2倍。
「両方の雑誌を読んでるよ!」という方も少数いるので2倍とはなりませんが、
それでも作品を知っている人の数は1誌で掲載されるより増えることは間違いないです。
理由の憶測2:話題になる
今この記事を読まれているアナタ、そして記事として書いているワタシがいるように
「なんで同じ原作で2つマンガがあるの?」と疑問にし話題になっています。
そして、2つマンガがある理由が明言されていないからこそ
「原作者と出版社でマンガ化に関して一悶着あって、2誌で描かれることになったんじゃないか」
「2つのマンガで売上を競わせて、売上が良かったほうをアニメ化するんじゃないか」
などの推察(一部は邪推)もさらに出て、もっと作品が盛り上げる。
以上の2点が私が思うところの「2つマンガがある理由」です。
2つのマンガは違った個性を持っている
「漫画家による表現の違い」を楽しめる
正直、同じ原作から2つのマンガが刊行されていると知った時には

意味わからん。
と思っていました。
ですが、実際に読んで比較してみると
- マンガで重要視する - 「キャラ」か「ストーリー」か
- 絵柄 - 「デフォルメ寄り」か「リアル寄り」か
と違いが大きくでるもんだなと思いました。
しかも、作品の大本である小説で脚本はしっかりとしている。
ですので、マンガになっても安定して面白く、
あとは純粋に「マンガ家によってどう表現されるか」という視点で楽しめました。

読み比べるという、ちょっと贅沢な遊びも楽しいですよ
「キャラ」を重要視したマンガ!
「ストーリー」を重要視したマンガ!
原作である小説はこちら!